【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。



「……そういえば鬼龍院くん、前に私に言ったよね?」


ゆっくりと、鬼龍院くんの方に目をやる。


「〝もし本当に君が違うと思うなら、この手を振りほどけばいい〟って、私に言ったよね?」


鬼龍院くんは黙り込んだまま、私を真っ直ぐと見つめている。


「振りほどいてどうなるの? そんなことをして、その人が私を嫌ったら? その人が私から離れてしまったら? その人が私を頼ってくれなくなったら? せっかく得た信頼が全て崩れてしまったら?」


自分の肩を抱く。

震えが収まらない。


「嫌な人だって思われたくなかった。いい人だと思われたかった。彼方だけじゃなくて、みんなからもそう思われたかった。……これって、普通のことでしょう?」


嫌われる。見捨てられる。見放される。一人になる。

そうなってしまうのが怖い。

ただただ、怖くてたまらないんだ。


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