【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「もう、誰かを拒む行為なんて私の頭にはなかった。忘れていた。わからなくなっていた」
必死に、必死に、この手を振り払われないように頑張ってきた。
「私が彼方を拒絶することだってあり得ない。だって、私の隣にずっといてくれたから」
ゆっくりと、彼方に向き直る。
「最初は、彼方が全部を諦めて一人になった時にこれはチャンスなんじゃないかって思って、ひとりぼっちの彼方に隣に、私だけの居場所をつくろうって考えた」
だから彼方の傍にいた。
傍にいると約束した。
(ねぇ彼方。ずっと一緒にいるから……彼方も、私とずっと一緒にいてね)
「彼方には私がいないとダメなんだからって……彼方にも、周りにも思い込ませようって思った」
必死に彼方の世話を焼いた。
あんまり引っ付いてても周りから変に思われたらいけないと思い、そのたびに私は『だって私は彼方の幼馴染みだから』と幼馴染みという関係にすがりついた。
幼馴染みという立場は、いろいろと好都合だったのだ。
「それは上手くいって、気付けば周りからは『一色くんには近衛さんがついてなきゃね』って言われるぐらいにまでなって」
本当に、本当に嬉しかった。
私がここにいる意味ができたみたいで、嬉しかったんだ。