【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。



彼方のことが好きではないと分かった今、なんでセレナちゃんが私と彼方を引き離そうとしたのか。

セレナちゃんは、どうして……


「……柚月さんは、わたしにとって救いなの」

「へ?」


救い?

私が、セレナちゃんの?


「一年生の頃、わたしは一人ぼっちだった。家に帰っても両親は仕事でいない。学校に来ても、みんなわたしのことなんて見て見ぬふり」

「セレナちゃん……」

「理由は分かってたわ。ほら、わたしって少しキツい性格でしょう? 一年生の頃は今よりもっとひどい有り様で……あんなんじゃあ、誰もわたしなんて近づこうなんてしないわよね」

「驚きだ、君は自分がキツい性格だということを自覚していたのか!」

「……」


鬼龍院くんの口にまたたい焼きを突っ込んで、セレナちゃんは話を続けた。


「友達もいなくて、誰もわたしに話し掛けてもくれなくて……それでも素直になれなくて……わたし、もう転校しようとも考えてたのよ?」


一年生の頃、確かにセレナちゃんはクラスで浮いていた。


美人で可愛くて頭も良くてお金持ちのお嬢様。


そんなセレナちゃんのことはすぐに噂になったけれど、同時に、みんなどこかセレナちゃんを別世界の人だと思っていた感じだった。


それに加えて、セレナちゃんの素っ気ないキツい態度に、誰もセレナちゃんに話し掛けなくなっていったのだ。


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