【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「君も来ていたのか、月城クン」
聞きたくもない声が聞こえてきて、ギギ……とぎこちなく、声がした方に顔を向ける。
「あら、あなたこそ来てらしたのね、鬼龍院司」
鬼龍院 司
高級ホテルをいくつも経営している鬼龍院財閥の跡取り息子であり、『何事も一番に』をモットーとしている口うるさいやつだ。
「ここはうちが経営しているホテルだからな。親が挨拶に顔を出すということで、僕もついてきたんだ」
鬼龍院司とこうして出会うのは、もう一度や二度ではない。
ファッションデザイナーとファッションモデルをやっている両親は、よく鬼龍院系列のホテルを借りてショーをやっている。
なんでも、彼のところのホテルの雰囲気とデザインが好きなんだとか。
だから親同士も仲がいいし、よく鬼龍院家のパーティーにも呼ばれたりもしたのだ。
だからといって鬼龍院司と、わたしこと月城セレナが仲がいいかと聞かれれば、それは全くの別問題である。