【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「何がそんなに気に食わないんだ?」
「なにもかもよ」
外はもう真っ暗で、バルコニーからは月明かりに照らされた、暗く綺麗な海が見渡せた。
「綺麗なドレスも、靴も、アクセサリーも、宝石も……嫌いな人にも笑顔で話し掛ける、大人も」
こんな世界にうんざりしていた。
こんな世界から抜け出したかった。
「あなたはよくやるわね。あんな人たちに囲まれて、よく正気を保ってられるわ」
「昔から鍛えられていたからな。鬼龍院財閥の跡取りとして、当然のことさ」
彼も自分と同じように、いろいろなしがらみを背負っている。
鬼龍院財閥の跡取り息子。
それには計り知れない重みがある。
「それに僕は鬼龍院財閥を世界一にするという役目がある。人脈の確保から入るのは当然のことだ」
「……わたしとこうして話しているのも、その人脈確保の中に含まれてるのかしら?」
「もちろんさ!」
言い切ったわねこの男。