【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「…………私、死んでない」
「穴に落ちたぐらいじゃ死なないよ?」
「いや普通死ぬよね!?」
「それに」
ぐっと、彼方が私に顔を近付けた。
「俺がついてるんだから、大丈夫。柚月のことは、絶対に俺が守るから」
「彼方……っ」
「柚月のこと大好きだからね」
「……うん、私も」
「そっか、嬉しい」
にこりと微笑んで、よしよしと私の頭を撫でた。
《さて、穴に落ちて辿り着いた先は深い深い森の中でした。どうすることもできない二人は、いったん近くの町を目指しました》
……うん、確かにどうしようもないしな。
ということで、ナレーションの言うとおりに私は彼方と一緒に近くの町を目指すことにした。
それにしても……
「彼方のその耳としっぽ、本物?」
「もちろん、本物だよ」
話を聞くと、彼方は正真正銘の白うさぎであり、今は女王様の元へ向かう途中だという。
「女王様のところへは、なんで行かなきゃ行けないの?」
「女王様は寂しがり屋だから、誰かが傍にいてあげないといけないんだ。今も凄く寂しいみたいで、出張中だったんだけど戻ってきたんだ」
白うさぎにも出張ってあるんだね……。