【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「彼方……っ」
少女は彼方の名前を呟いて、涙目でその少年を見つめた。
「俺は柚月がいるこの世界を、壊して欲しくなんてない。ずっと一緒にいたい」
目の前の少年が優しく微笑む。
「辛いときはいつでも俺がいるから。だから泣かないで?」
「それにね、セレナちゃんと鬼龍院くんっていうお友達もお城の外に来てるんだよ! こんなところで泣いてないで、外に出てみんなで一緒に遊ぼうよ!」
私が言うと、少女は嬉しそうに顔を輝かせた。
「ねぇ彼方、今の聞いた!? 私のお友達が来てるんですって!」
「ちゃんと聞いてたよ柚月。じゃあ、お友達を待たせたら悪いから、早く行かなきゃね」
小さい彼方が小さい私の手を握る。
そのまま二人で、外に繋がる扉に手をかけた。
ふと、二人は私に振り返る。
「ねぇ少しだけ大人の私、最後に一つ聞いてもいい?」
「柚月、最後に一つ聞いていい?」
《最後に一つだけ、あなたに質問です》
「この世界のこと、好き?」
少女か少年か、ナレーションか、その声は誰のものだったか。
どちらにせよ、私の答えなんて決まっていた。
「うん! みんながいるこの世界が、彼方がいてくれるこの世界が、私、大好き!」