【完】無気力な幼馴染みがどうやら本気を出したみたいです。
「とにかく、私が書いてあげるから日誌貸して」
「ううん、俺が書く、から」
「でも」
「書くって言ったのは、俺だから」
「……わかった」
彼方が書き終わるのをじっと待つ。
まだ夏の香りが残っている風が、ふわりふわりと教室の中に入ってくる。
彼方は……よし、ちゃんと真剣に書いてるみたいね。
まったく彼方は、私がいないとどうしようもないんだから。
「ねぇ、柚月」
「ん、なに?」
「どうして、帰らないの?」
「あのねぇ、帰らないんじゃなくて、帰れないの。彼方が日誌をさぼっちゃってたせいでね」
「柚月だけでも、帰ればいいのに」