真夏の青空、さかさまにして

ぶつくさ言いながらも真夏がスリッパを用意してくれたので、もう一度「お邪魔します」と呟いて真夏の背中を追う。

話を聞く限り、忠さんがあの剣道場の師範なのだろう。「お母さんは?」と聞くと、「仕事。もうすぐ帰ってくるけどね」と返された。



「よし、じゃあ先にあずさの部屋に行こっか!それで荷物も置けばいいよ、重いでしょ?」

「ああうん、ありがとう」

「ううん、わたしも制服着替えたいしちょうどいいや」



何がちょうどいいのかよくわからなかったが、わざわざ聞き返すのも面倒なので黙ってそのままついて行く。

玄関から入ってすぐにある階段を真夏はトントントンと軽やかに登っていく。だけど僕が足をかけると、荷物を持っているせいもあってかギシリと木板が軋んだ。



「ねえ、ちょっとこれ……」



大丈夫かな、と顔を上げて固まる。



「……君さあ、」

「ん?なに?」



ふわふわと髪を揺らしながら真夏が僕を振り返る。会ったばかりの僕がこんなこと言うのもなんだけど、髪から何までふわふわしすぎじゃないか。

高校生なんだから、もう少ししっかりした方がいいと思う。



「スカート、もう少し長くした方がいいんじゃない」

「……へ?スカート?」

「不可抗力だから」

「ふかこ……なに?」



きょとんとする真夏は、僕がこれだけ言ってもわからないらしい。アホだ。



「下着見えてる」



はっきりと言うとようやく理解したらしい。能天気に笑っていた真夏の顔が見る見るうちに真っ赤に染まっていく。
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