真夏の青空、さかさまにして
「なっ、なっ、下着とか言わないでよ‼︎」
「じゃあパンツって言えばいいわけ?」
「パッ……!」
「それとも何も言わずに見てたほうがよかった?」
「よくない‼︎ 言ってくれてありがとう‼︎」
言いながら踊り場まで駆け上がっていく真夏のスカートがひらひらと揺れて、はあ、と僕は目を逸らす。だからスカートを抑えろって。
「安心して、僕は君みたいなのタイプじゃないから何とも思ってない。ちんちくりんだし」
「ちんちくりん……」
「僕も上がるから早く二階まで上がって」
「……はーい」
踊り場からいちばん上までもたもたと歩いていく真夏を確認して、やっと僕も階段を上りはじめる。まったく、階段を上がるだけで一苦労だ。
階段を時々軋ませながらも二階に着くと、真夏が不服そうに頰を膨らませて僕を待っていた。
「あずさも、ぼんきゅっぼんが好みなんだ」
「あずさもって?」
「クラスの男子にも同じようなこと言われるの」
学校でもそういう扱いなのかと吹き出しそうになった。まあ想像は容易にできる。僕なんか真夏が青葉西の制服を着ていなかったら絶対に高校生だとわからなかったはずだ。
さっきもスカートの中が見えたところで驚きはすれど、それ以上の感情は何ひとつ湧いてこなかった。強いて言うなら、ほんとに色気ねえなあ、くらい。
「男なんかだいたいそういうもんだよ」
平然と言ってのけると、真夏が「さいてー」と僕をじろりと睨んだ。だけどまったく迫力もなくて、親戚の子どもに下世話な話を聞かせてしまった気分だった。