真夏の青空、さかさまにして

「それで僕の部屋ってどこ? 最低で結構だから早く案内してよ。荷物重いんだ」

「はいはい、かしこまりましたよー」



僕のこの悪態を笑ってかわす人間は片手で数えられるほどしかいないけれど、真夏は数少ないそのうちの一人だと思う。


まあ、実際腹の中がどうなってるかはわからないけどね。案外こういう人間のほうが裏でボロクソ言ってるんだ、僕の経験上。

でもそれが当然の反応だと思うし、むしろ笑顔でへらへら接してくるほうが気味が悪い。僕だってそれに気づいたところで態度を改めるわけでもない。



「あずさの部屋はいちばん奥の部屋ね。もともと物置きみたいになってたんだけど、ちゃんと片付けてあるから。それでここが私の部屋」



話しながら〝まなつ〟と書かれたネームプレートがかかるドアを通り過ぎる。



「隣なの?」

「そうだよ、何かあったら呼んでくれていいからね。夜中にオバケが怖くなったら話相手になってあげてもいいよ」

「それはそっちじゃない?幼稚園児みたいな体型して。まあ僕は君が泣いて僕のところに来ようが、絶対に中に入れないけどね」



からかうようなむかつく顔で言ってきたから、眉ひとつ動かさないで言葉を返した。すると真夏は「なんでそんな意地悪ばっかり言うの!仲良くしようよ!」とぷくりと頰を膨らます。

そりゃあ一ヶ月以上お世話になるんだから険悪になろうとは思わないが、わざわざ仲良しこよしする必要性も感じない。そもそも仲良くしようよって、幼稚園児でもあるまいし。
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