真夏の青空、さかさまにして

いつの日かの青



蒸し暑い。

タイミング悪く先週から梅雨に入ってしまったため、ここ最近は雨ばかりで鬱陶しい。窓の外ではぽつぽつと小さな雨の粒が落ちていて、今日も生憎の雨模様だ。



「あっつ……」



なんでこんな時期に、と朦朧とする意識のなかで思う。たしか、去年も同じような状況で同じようなことを思っていたはずだ。

ままならない呼吸、大袈裟に跳ねる心臓。べっとりと体中にまとわりつく汗は、下着にまで染み渡っていて気持ち悪い。頭から思いきり水を被って、綺麗に洗濯された服を着て、クーラーの効いた部屋でベッドに飛び込みたい。


なんで僕、こんなところでこんなことしてるんだっけ。なんで僕、去年もあんな苦しい思いしたのにまたここにいるんだっけ。なんでだっけ。頭が上手く回らない。疲れた、死にそうだ。体が鉛みたいに重い。

一向に整う気配のない呼吸のせいか、ポジティブな感情が一切沸いてこない。


そんな陰気くさいであろう僕の背中に「おーいっ」と小声ながらもハツラツとした声がぶつかった。よく聞き慣れたそれは相変わらずよく響いて、振り返らないでも、誰のものかすぐにわかった。



「こっち、こっち!」

「はいはい聞こえてるよ」



顔だけを声のほうに向ければ、思った通りその人がいる。手を振りながら、こそこそと遠慮がちに近づいてくる姿に小さく笑みがこぼれた。
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