真夏の青空、さかさまにして
避けられない衝突
「あれ、おはよー!あずさ!」
「……うるさ」
居候生活、二日目。
目覚ましもセットしていないのに5時半ちょうどに目が覚めてしまうのは、他人の家でも変わらないらしい。我ながらなかなかの健康体だと思う。
「意外だなー、あずさって早起きなんだ」
卵かけご飯を口に流し込みながら真夏が言う。それはこっちの台詞だ。
水を飲みに一階に下りたら、絶対に朝が苦手だろうと思っていた真夏が僕よりも先に起きていた。忠さんや真夏の母の十和子(とわこ)さん、兄の真春(まはる)さんはまだ起きていないらしく、台所のテーブルで一人ご飯を頬張っている。
「あずさも食べる?卵かけご飯」
ほとんど終わりかけのそれに目をやって、首を横に振る。あいにく僕の胃袋は起きてすぐにご飯を突っ込めるほど強くできていないし、きっと十和子さんが用意してくれるだろうに先に食べてしまうのは失礼な気がする。
「それより水飲みたいんだけど、コップどれ借りたらいい?」
「あーえっとね、左から二番目のグレーのコップ使っていいよ。昨日も使ってたやつ」
「これ?」
「そうそう、それあずさ用にして」
どうもと呟いて、水道水を入れようとしたら止められた。冷蔵庫にスーパーで買ってきた水があるらしい。
天然水と書かれたペットボトルを冷蔵庫から出してコップに注いでいると、真夏が卵かけご飯を食べ終わった。「ごちそうさまでした」と丁寧に手を合わせてから流し台に立つ一連の動作を、僕は何とはなしに見つめていた。