真夏の青空、さかさまにして

はあ、と思わずため息を落とせば、真夏も同じように深いため息を落とした。一体彼女が何に対してため息を吐いているのか、僕には全くわからないわけだけど。



「仕方ない……答えを教えてあげよう」

「まだ言うか」

「正解は〜〜!」



昨日といい、しつこいのは彼女の性格なのか。

しかもわざわざ時間をタメて、全然必要のない見せ場を作ろうとしてくれているらしい。本当にいらない。



「朝練に行くのでーす!」



ジャジャーンと自分で言ってしまうのが見ていて痛かった。



「へえ、あっそ。頑張れ」


これ以上面倒臭いことはごめんだ。全く気持ちのこもっていない言葉を残して、さっさと出て行こうと踵を返す。

だけどそれを阻止するように、がしっと手首を掴まれた。うわ、最悪。恐る恐る振り向くとにっこり満面の笑みの真夏がいた。



「ということで、あずさも強制参加!せっかく早起きなんだしね!さ、行こうっ」

「は?何言ってんの?」

「朝練行こう!」

「馬鹿なの?そういうことじゃなくて、僕は剣道しないって昨日散々言ったよね」



昨日、真夏は本当にしつこかった。忠さんと話し終わった後も、晩ご飯を食べている間も、僕に「剣道しよう!」と延々と話しかけてくる。しかも挙げ句の果てには、電気を消してさあ寝ようという僕の部屋にまで突入してきた。

それまでは軽くあしらっていたが、さすがにそれは静かに説教をした。微塵も女に見えなかろうが、生物学上は一応女なんだからああいうことはやめてほしい。何よりうざい。
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