真夏の青空、さかさまにして
にかっと白い歯を見せて目を細めたくしゃくしゃの笑顔に、いくつもの汗がきらりきらりと落ちてゆく。
それがまぶしくて、鬱陶しくて。
「……うざ」
無意識に低い声がこぼれた。だけどそれを拾えなかったのか、真夏が「へっ?」と間抜けな声を出して、つくづく癪にさわるやつだなと思う。舌打ちしそうになったのをぐっと堪えた。
「僕さ、君みたいなの死ぬほど嫌いだ」
嫌味しか込めていないあからさまな作り笑いと誤魔化しようのない敵意に、さすがの真夏もしっかりと表情を強張らせる。それを見て、僕は少し安堵した。
「現実見れてないバカって、人生楽しそうでいいよね。綺麗事ばっかで反吐が出る」
「きれいごと……?」
「勝ち負けじゃない?何言ってんの?そんなもんアンタが言ったって、勝つことができない自分を正当化するための言い訳にしか聞こえないね。なにが楽しいだよ、勝てないスポーツがおもしろいわけないだろ」
冷静さを取り繕うとしても、すぐにメッキが剥がれてしまう。こんなことは今までなかった。ここに来て、真夏と出会ってからの僕はきっとどこかおかしい。
この場所がそうさせているのか、真夏がそうさせているのか。よくわからない。
「剣道はスポーツっていう枠に収まらないと思うんだ」
ぽつりと、ひとり言のように真夏が呟いた。その瞳はまっすぐと僕を捕らえているはずなのに、ここではないどこかを見ている。そんな気がした。