真夏の青空、さかさまにして
「説明する気ある?」
「あるよ!めちゃくちゃある!」
「ないよね、まったく」
「しまった、あずさの理解力がこんなにも乏しいなんて……」
「いやどう考えても君の国語力の問題だから 」
さっきまであんなにピリピリしていたのが嘘みたいに気の抜けたゆるゆるぐだぐだの会話に頭を抱える。
やれやれとアメリカ人のようなリアクションをした真夏が「しょうがないなー」とおちゃらけたように言って。ああもう、調子が狂う。
「わたしが試合で勝てるようになれば、あずさも少しはわたしの言葉に耳を傾けてくれるんでしょ?だったらあずさが、わたしが勝てる剣道をできるように指導してよ、ってこと!……おわかり?」
もともと真夏のこういうところににイラッするのはもちろんのこと、最後のは某海賊映画の船長をマネしてるんだろうなとなんとなくわかってしまったのがなんだか余計にカンにさわる。
ここは変に触れずにスルーするのが正解だ。
「別にそんなことしなくてもいいんじゃない。今日はなんかムカついて色々言っちゃっただけで、もう僕は君がなにやってようが口出ししたりしないって約束するし、好きにすれば」
「いやいやそういうことじゃなくてね、わたしは……」
「あーわかったわかった、変に突っかかったことなら僕が悪かった。謝るから……」
「あずさ‼︎」
「イッ……⁉︎」
僕の声を遮って、ぼこんっというこもった音とともに小さな衝撃が頭上に落ちた。痛くはないけれど、予想していなかったそれに情けなく体が跳ねる。