真夏の青空、さかさまにして
僕はなぜか恥ずかしいような申し訳ないような気持ちになって、逃げるように視線を逸らした。だけど、それが余計に自分を幼くしていることに後から気がついて悔しくなる。
掻き乱される。剥がされる。今、僕を襲うのはそんな感覚たちだ。
「わたしの勝手な都合だってわかってるよ。だけど、それでもわたしは……」
なんとかいつもの自分を取り戻したくて意地になってそちらを向き直れば、そこはほんの一瞬だけ切り取られたスローモーションの世界があった。
わずかに伏せられた瞼。刹那、ひたいから光る雫が透明の軌跡を描きながらそこをすべり落ち、瞳を縁取る睫毛の先にたどり着く。
危なげに揺らめいて、きらめいて。見惚れるうちに、その影から僕を射抜く瞳が現れた。
「あずさに思い出してほしい」
ぽたり、と。光がこぼれ落ちる。
それはこの暑さの中動き回れば誰のひたいにも浮かぶもので、僕だってその正体が何かくらい当然わかっている。なんてことのないものだ。
だけどそのとき、僕にはそれが彼女の涙に見えて仕方なかったんだ。
「まな……」
なぜそうしようとしたのかはわからない。ただ、僕のせいだと責められているような気がして無意識に手を伸ばした。まるでそうすることが僕の役目のように。
ごめん、ごめんね。泣かないで。僕は〝また〟君をーー。
……また? そこでハッとする。またってなんだ。今の既視感はいったい……。
「せんせー!」
「……は?」
「わー!せんせーおにぎりもってるー!」