真夏の青空、さかさまにして
いったいどこをどう見てそう思うんだ。彼氏彼女がこんな汗だくのぼろぼろで肉屋に肉を買いに来るか。そう思っていると真夏がまったく同じことを口にしたので、僕は「そうですよ、やめてください」と強めの声でそれに賛同した。
「あらまあ、そうなの。でも仲はいいのね」
「どこがですか!」
「仲はいいです!」
胸を張って言う真夏に「はあ⁉︎」と僕が声を上げる。ついさっき聞いたような会話だ。
「さっきからなんなの、別に仲良くないでしょ」
「仲いいじゃん!ほらっ、仲良し‼︎」
「……っは⁉︎」
僕の腕にぴたりとくっついて真夏が機嫌よくピースをする。それを僕は何を考えることもなく反射的に払う。
これだから真夏は……!
「えーあずさー、どこ行くの?」
「帰るんだよ‼︎」
「ちょっとちょっと!少しくらい持ってよ、男の子でしょ‼︎」
あんたが女の子だって自覚を持ったらな!そう言おうとしてやめた。真夏にそんなことを言うのはなんだかシャクだ。
肉の入ったビニール袋を無言でひとつ奪い取って、肉屋を出て行く。そうすると、真夏が大きく手を振りながら「ごめんねーおばちゃん!またねー!」と僕の後を急いで追ってきた。
「ねえー!あずさ、なんで怒ってるの?」
「知らない」
「ええ、知らないって……」
一生懸命僕についてくる真夏もさすがにもう疲れたのか、速歩きをする僕に「走ろう」とは言わなかった。
やっぱり運動していないとはいえ、男子と女子ではもともとの体の作りが違うのだ。肉屋についてすぐに回復したと思っていたけれどどうやらそうではなかったらしく、真夏の息は少し荒い。