真夏の青空、さかさまにして
「ね、あずさ。駄菓子屋さん寄ろうよ」
「そんなの来た道になかったじゃん」
「だって行きは遠回りしたから」
……どおりで全然着かないわけだ。
「ね、ほら!駄菓子屋さん寄ってこーよ!」
真夏にぐいぐいと引っ張られて、抵抗する気力もなく連れてこられたのは今どきめずらしい昔ながらの駄菓子屋だった。だけど寂れている様子はなく、店の前には自転車が数台置いてあって、中には小学生くらいの子どもがいるみたいだった。
店の入口には氷と書かれた小さな旗と風鈴が涼しげに揺れている。
「やだよ、肉ダメになっちゃうじゃん」
ちりんちりんと鳴る風鈴の音にはっとして、店に入る一歩手前でそう言うと、真夏が「えー!」と大げさに叫んだ。
「なんでここまで来て!」
「連れてこられたんだからしょうがないじゃん」
「やだ、入りたい!お肉は保冷剤入れてもらったから大丈夫だよ!ね⁉︎」
「やだよ、早く帰りたい」
子どものように駄々をこねる真夏を突き放すように言うと、真夏は眉毛を下げてぽつりと言った。
「……喉、かわいた」
そう言われると僕は「わかった」と言うしかなかった。それを聞いた瞬間、しおれていた真夏は急に元気になり、「やったー!なに買おう」とそれはそれは楽しそうに駄菓子屋の中に入っていった。
なんだ、そのまま家まで帰れそうじゃないか。
「はあ……まあ、いいか」
ひとつため息をついてから、僕もそのあとを追って中に入る。