真夏の青空、さかさまにして
店内には子どもが四人いて、僕らが入ると店はいっぱいになった。小さな店内には駄菓子のほかにも文房具やカードゲームなどがぎゅっと隙間なく置かれている。
駄菓子屋には小さい頃に何度か入った記憶があるけれど、こんな歳になって入ると思ってはいなかった。なんだか懐かしい匂いがする。
「おじちゃーん、久しぶり」
ここでも真夏は店主のおじいさんに親しく話しかけた。おじいさんは少し驚いたようにしてから「真夏ちゃん、いらっしゃい」と微笑んだ。
それから僕のほうをみてもう一度「いらっしゃい」と言ってくれたので、僕は小さくお辞儀をした。
「真夏、僕外で待ってる」
扇風機が一台回っているだけの店内は思っていたよりも蒸し暑く、なにか買いたかったわけじゃない僕は先に店の外に出た。店の前には色あせた青いベンチが置いてある。僕はそこに座って真夏を待つことにした。
駄菓子屋の影は僕の頭を覆うくらいまでしかなく、外は外でやっぱり暑かったのだが、頭の上で揺れる小さな旗と風鈴の音がほんの少しだけ僕を涼しげな気持ちにさせた。
「はい、どーぞ」
ずいっと目の前に差し出されたのは瓶ラムネだった。
真夏が先に開けてしまったのか、しゅわしゅわ弾ける泡のなかでビー玉がころんと転がって、それが真夏の青空に透ける。まるで夏空がそこに閉じ込められているみたいだった。
「……あずさ?」
なかなか受け取らない僕を怪訝そうに真夏が見つめる。
「……僕、炭酸ニガテ」