真夏の青空、さかさまにして

炭酸のあの口のなかをパチパチと突っつくような感覚が昔から苦手だ。

そもそも誰が飲み物に二酸化炭素なんて入れようと考えたんだろう。びっくり箱でもあるまいのに。


無意識に顔をしかめていたのか、そんな僕を見て真夏が遠慮なしに噴き出した。



「あはは、意外!あずさ子どもみたい!」

「……うるさいな、誰にだって苦手なものはあるでしょ」

「そうだけど、あずさが炭酸苦手って意外だったんだもん。ブラックコーヒーは普通に飲むのにねえ」



そんなことを言っている真夏はブラックコーヒーが苦手だ。そっちの方が子どもみたいじゃないか。炭酸が苦手なのは普通だろう。



「ふふ、ごめんごめん。でも空けちゃったしちょっとだけでも飲んでみてよ」

「真夏が飲めばいいじゃん」

「わたしにはわたしの分があるもん。二本なんて飲めないよ」



「飲めないわけじゃないんだよね?」と言う真夏の顔は半分にやけていて、ついイラッとしてしまう。



「ね、お願い」



ぱちん、と顔の前で手を合わせてはいるけれど、人になにかをお願いするような顔ではない。完全におもしろがってる顔だ。



「……飲まないからね」

「飲めないの?」

「飲めるけど」

「じゃあ、はいっ」



もう一度目の前に差し出されたラムネ。僕は真夏にからかわれているこの状況がおもしろくなくて、反射的にそれを受け取ってしまった。


やられた、と思うがもう遅い。今さらやっぱり無理、と返すことは僕の変なプライドが許さなかった。



「ふふっ。どうぞ、召し上がれ」

「……コノヤロウ」
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