真夏の青空、さかさまにして
苦しいのか反射的になのか、真夏が抵抗するように僕の腕をつかんだ。それでも僕はハンカチを真夏の顔に押しつけ続け、はやく泣きやめ、と半分祈るような気持ちで時々それを掻き回した。
「……あずさ、いたい……」
ハンカチの向こう側から聞こえてきたいつもとさほど変わらない声。僕はそれに少しほっとして、そこでやっとハンカチを顔から離してやった。
「泣き止んだ?」
「……ハイ、驚きで涙がひっこみました」
「それはよかった」
「よくないよ、普通に痛いよ……」
むすっとしながら真夏が言うので、「痛かろうがなんだろうが泣きやめばそれでいい」と返事をすれば「あずさってモテないでしょ」とぼそっと小さな声で言われた。
別にモテなくていいし、余計なお世話だ。
「で、なにがそんなに悔しかったわけ?」
「えっ」
真夏が驚いたようにしてから、またじわりと瞳を潤ませる。僕は慌てて真夏にハンカチを投げつけ、「泣くなよ」ともう一度念を押した。
今のどこに泣く要素があったんだ。それとも僕がなにかマズイことでも言ったのだろうか。……まったくわからない。これだから女子って面倒だ。
「そうなの」
「は?」
涙をこらえているのか、顔のパーツが中心によってブサイクだ。
「悔しかったの、わたし。わたしってどうしてこんな、下手くそなんだろう……っ」
「……例の〝勝ちたい人〟にボロクソやられたりした?」
「ど、どうしてわかるの……」