真夏の青空、さかさまにして
「メンつけ」
「はい」
ぼうっとしている間に、すり足などのウォーミングアップはすべて終わっていたらしい。シュショーの号令を合図に、横一列に並んだ部員たちが一斉にメンをつけ始める。
シュッ、シュ、とメン紐がメンに擦れる音が静かな道場に響く。目を引かれたのは、体だけでなく、メンをつけるひとつひとつの動作が大きなシュショーだった。
いいなあ、と思う。真夏が言っていた〝様になる〟って、きっとああいうことを言うんだ。僕だってあんな風に体が大きかったらもっと……。
そこまで考えてぶんぶんと首を振る。
もっとなんだって言うんだ。体が大きかろうが小さかろうがどうだっていい。体が大きかったところでもう使い道なんてないはずだ。今さらもう、防具姿が様になんてならなくていい。
全員がメンをつけ終わると練習が始まる。
切り返し、メン打ち、コテ打ち、ドウ打ち、コテメン打ち……。極普通の基礎的な練習だ。しかしその基礎的な一本一本で、その人がどれくらい剣道に携わり、どのくらいの腕なのか、だいたいのことがわかる。
真夏は四年もやってる割に相変わらずの下手くそ。でもその真夏よりもずっと下手くそなあそこの男子はたぶん一年生で、高校から剣道を始めた初心者だろう。シュショーは見た目通り力強く豪快な剣道で、もう何年も剣道に携わっていそうだ。
その他は、男子が二人と女子が一人。
男子のほうはどちらも高校から始めたのだろうか。そこまで下手くそではないけれど、どこかまだ初心者臭さが残っている。二年生か三年生だろう。
そして女子は……なるほど、あれが〝アヤちゃん〟か。