俺と恋しようよ
「隠せなくなったら困るからほどほどにしとく……」


「ま、花菜はどれもかわいいけどね」


「……いいよ、お世辞は」



失恋なんてずっと前からしてるけど。
でも、やっぱり恋の終わりを実感すると切なくて。
そういう時に優しい気持ちを言われるとやっぱり心に染みる。



「お世辞なんかじゃないから」


「……え?」


「いままでは花菜が兄貴のこと好きだったから遠慮してた」



耳元で話される千太の言葉がストンと心に落ちてくる。



「千太……」


「俺を使っていいから」


「使う?」



〝使う〟なんてこと考えたことがなくて、首をかしげる。



「忘れるには新しい恋じゃない?」


「新しい恋?」


「うん、俺と恋しようよ」



あたしの肩を掴んで、千太から離す。



「千太と……?」



耕ちゃんがダメだから、千太となんて許されるのだろうか。
そもそも千太のことを好きになれるのだろうか。

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