嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
大体ちょっと考えれば分かるではないか。職場のハイスペック王子様がわたしなんかを本気で好きなわけないって。
あのとき自分の名前が出なかったことにいたくプライドが傷付いたというなら、わたしを恨むんじゃなくて課長を恨め。
あかん、泣けてきた。
こんな仕打ちをされて笑い飛ばせるほどには強くない。膝を抱えて丸くなって床に座り込んだまま声を殺して泣く。
グレイのスカートに染みがどんどん広がっていくけれど構うもんか、どうせ外に出たら傘もきっと役に立たないくらいの嵐だ。
「岩崎」
名前を呼ばれたような気がして肩がピクリと震える。
空耳だ。
だって置いてけぼりにされたんだから。
そのまま膝に顔を埋めたままでいたら、不意に後ろから両脇の下に手が入れられて立ち上がらされた。
「ひっ・・・・・!」
叫ぼうとしたわたしの口を大きな手が覆う。
背中から誰かがわたしを抱きしめる。
恐怖のあまり身体が石のように固まった。
「岩崎、オレだ」