嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
そしてハッと気付く。
上司と部下にしては距離が近いことに。
そろそろと囲われた腕の中で顔を上げた。目が合うとなんだか嬉しそうに課長の目が細められる。
「す・・・・・すいません。つい・・・・・」
掴んだワイシャツを離して課長の胸を押した。
あれ・・・・・?
逃げられない・・・・・?
「あの、課長・・・・・もう大丈夫なので・・・・・」
暗に離して欲しいとお願いするのに、益々抱き締める腕がキツくなる。
少し遠ざかった雷の音がまた響いた。
「オレが大丈夫やない」
・・・・・・・・・・?
「課長・・・・・雷が怖いんですか?」
「いいや」
「そしたら離してください」
頭をゆるゆると撫でられる。
「なんで?」
「いや、だってこれおかしい・・・・・」
「オレは楽しい」
楽しい・・・・・?
「折角獲物がかかったのに、放してやるアホはいてへんやろ」
見上げた課長は顔には笑みが貼り付けられているのに、今までに見たことがないような黒いオーラを纏っていた。