嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
人より抜きん出て可愛いだとか
バリバリ仕事が出来るとか
そんなことは全くない。
寧ろその他大勢に埋もれてしまうような
平凡な女子だと自分でも充分に分かっている。
肩先までのストレートの髪、低い鼻、団栗眼。母親に言わせると『愛嬌がある』外見らしいけれど。
女子大を卒業して、なんとか大手企業に就職して、後は結婚相手が見つかればいいなあ、なんて思っていたごくごく普通の女子だったのに。
佐田さんの意地悪が始まってから2ヵ月と少し。
一課にいる他の女の子も佐田さんに睨まれたくないからか見て見ぬ振り。それどころか一緒になって意地悪をされることがある。
この間は課長に提出する有給休暇届けをシュレッダーにかけられた。
無意味な仕事を割り振られるなんて日常茶飯事。
お昼休憩に行こうとすると用事を言いつけられる。
日中は外回りに出ている男性社員がいないときに限ってイジメられる。
流石に鈍感でのんびり屋のわたしでも我慢の針が振り切れそうだ。
原因は分かっている。
なのにわたしは何にも出来ない。
自分でも持て余す厄介な感情が絡んでいるから。