嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
井坂課長(34)の事情


前営業一課長、現経営企画室室長の堀田さんに呼び出されたのは会議室。

今日は大口契約がまとまったお祝いで飲み会があるので仕事は早目に切り上げていた。

「今日飲み会やろ、手短に済ますからまあ座れ」

堀田さんは大学の先輩でもあり、営業一課でも随分可愛がってもらった。

オレに仕事を叩き込んでくれたのもこの人だ。

「なんか深刻な話ですか?」

「まあ、深刻っていえば深刻やな。お前、再来年経営戦略室が出来るの知ってるか?」

「ああ、噂だけ」

「僕がスライドして室長になりそうや」

「そらおめでとうございます」

「でだな、お前に頼みがある」


なんだ?
新部署の立ち上げを手伝って欲しいってことか?


「お前、2年ほどアメリカに行かへんか?」

予想の斜め上をいく提案に少し驚く。


「アメリカの販路拡大をな、やって欲しいんや。で、帰ってきたら室長をお前に譲る」

「営業の成績だけやと弱いですか?」

「そうでもない、お前はよくやってる。ダメ押しでアメリカの戦績も足しとけばどっからも文句は出ん」
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