嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜


日本にいない間にあのオッサンに食われたら泣くに泣けない。他にも狙っているヤツがいそうだしな。



岩崎が欲しいと自覚したのはいつだったろうか。

容姿は普通。
目立って可愛いとか色気があるとかはない。

新入社員でオレの下に配属されてきたときにも別段何とも思わなかった。


ただよく笑って、無邪気で、バカ正直なヤツだなあと思った。


つい声をかけたくなる、つい揶揄いたくなる、そんなヤツだった。


1年ほど前だったか、仕事の途中で眠気覚ましにコーヒーを入れようと給湯室に入ったとき、そこに岩崎がいた。


「あ・・・・・課長・・・・・」


岩崎の顔を見て思わず吹き出す。


餅らしきものにかぶりついていた岩崎の口の周りは餅粉で真っ白だった。

「お前・・・・・なにしてんの?」

「こっ小林がお客様に貰ったってくれたんです。1個しかないからこっそり食ってこいって」

「大福?」

「そうなんです!京都の行列ができる老舗の豆大福」

口の周りを白くしてなんともいい顔をして笑う。
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