嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
こんな顔をして笑ってくれるなら菓子の一つや二つ、皆に内緒でやりたくなる気持ちも分かる。
傍らにあったキッチンペーパーを1枚取って口元を拭ってやるとまん丸の目を限界まで見開いて真っ赤になった。
なんだ、めちゃくちゃ可愛いやないか。
「・・・・・それ、『よつば』の豆大福やろ、美味いよな」
ブンブンと岩崎が真っ赤な顔のまんま首を縦に振る。
いつもは女子社員に必要以上に接触しないようにしていた。余計な誤解をまねかないように。
オレは自分が人気者だということを理解しているから。
なのに
気が付くと岩崎の頭をぐりぐりと撫でていた。
「仕事に戻る前に鏡を見ろよ」
やっぱり真っ赤な顔のまま肩を竦めてオレに撫でられている岩崎。
いつまでも岩崎を見ていたいような気がした。
毎日会っている相手だというのに、ささいなきっかけで目が離せなくなる。
次第に恋になる。
オフィスの中で気が付けばその姿を探し、何気なく触れて、さり気なく構い、徐々に、ゆっくりとオレの腕の中に堕ちてくるように仕向けてきた。
呆れるほど鈍感なのには苦労したけれど。