嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
あの飲み会以来、佐田たち女子社員に嫌がらせをされているのは知っていた。
好意を正直に皆の前で明かしたのに、それでもあの鈍感娘は何のリアクションもしない。
イジメられていることを言いつけにも来ない。
我慢強過ぎだ、アホ。
変に助け舟を出せばまた拗れるかもと暫く傍観していたオレも悪かったけれど。
朝からの雨は台風の接近によって激しさを増し、交通機関もストップしだした。会社から全員帰宅するよう連絡が入ったとき、オレは京都に外回りに出ていた。同じように外回りに出ている課員にも連絡し、佐田に電話で内勤の者にも帰るように伝える。
ふと不安になる。
岩崎は大丈夫だろうか。
商談を終え、大阪に戻りながら岩崎の携帯を鳴らすけれど繋がらない。
胸騒ぎがした。
一旦自宅に戻り、益々酷くなる嵐の中、車で会社を目指す。
ひとけのないオフィス、非常灯だけが灯る薄暗さに目が慣れると蹲る小さな影に気付いた。
震える肩。
後ろから立ち上がらせて抱き込むと、頼りない身体が胸の中にすっぽりと収まる。