嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
月曜日、課長の家から出勤する。
一緒に行こうという課長の誘いを力いっぱい断り、一人で先に家を出た。
朝から一緒に歩いているところなんか会社の人に見られて噂にでもなってしまったら恐ろし過ぎる。
「そんな気にすることないのに」
「気にします。まだお勤めは辞めないんですからこれ以上女子に嫌われたくないです」
「ふうん、ほなしゃあないか」
聞き分けてくれたようでホッとした。
いつものように会社のエントランスを通りエレベーターの列に並ぶ。列の中に見知った顔もちらほらあるのでおはようございます、と声に出して。
おはようございます、と返ってはくるものの、なんだか空気が微妙だ。
首を傾げながらもオフィスに入る。
営業1課から4課までが並ぶフロアは広く、8時前だというのに仕事を始めている人もいる。
「おはようございます」
いつものように入口で大きく挨拶をすると自分に一斉に視線が集まった。
しかもそれらが生温かい。
自分の席まで行くと、真向かいにある机で小林がパソコンと睨めっこしていた。