嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
外堀は完璧に埋められました。
八代くんから金曜日のことを聞いて、軽く目眩がした。
婚約者?
朝から生温かい目で見られる理由が分かった。
道理で有休を勧められた筈だ。
「愛されてますよねー」
八代くんが何かをわたしに差し出してくる。よく見るとそれはバンドエイド。
「?」
八代くんが自分の右の鎖骨の辺りを指差した。
「岩崎はオレのもんだーって印がついてますよ、服で見えるか見えないかの微妙な場所に。さっき小林さんは見えたみたいで大ショック受けてましたけど」
印・・・・・?
わたしがキョトンとしていたのが分かったのか八代くんが言い直す。
「キスマーク」
ブラウスの首元はそんなに開いている訳ではないのに。
週末、食べられてしまうんじゃないかと思うくらい身体中に吸いつかれ、お風呂に入って鏡を見て悲鳴をあげそうになった。朝、ちゃんと確認したのにお化粧をするときにはたまたま見えなかったのか気が付かなかった。
一気に顔が熱くなる。
今ならきっと羞恥で死ねる。
「まあ課長も気の毒でしたからね、岩崎さんもそのくらいのおイタは許してあげないと」
「・・・・・・・・・・気の毒?」
「気の毒ですよ、岩崎さん鈍感過ぎて。女子で課長に構われたりしてんの岩崎さんだけやないですか。少なくとも僕は課長が他の女子社員にイイコイイコしてるの見たことないですもん」
「う・・・・・・・・・・」