嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜


「オマケに小林さんにはお菓子で簡単に飼い慣らされてるし」

「・・・・・甘い物ニガテやしって取引先でもらったお菓子もらってただけやもん」

飼い慣らされてとかどんな言いようだ。

「下心たっぷりやったんですよ。気が付かなかったのは岩崎さんにとっては幸い、小林さんにとっては不幸ですけどね」

グウの音も出ない。
というか八代、仕事の合間にそんな人間観察に精を出していたのか。


「お前ら、こんなひとけのないとこで何をしてる?」


突然後ろからかけられた低い声に飛び上がる。


「岩崎さんに現状把握のための説明をしてただけでーす」

八代くんがわたしに小さく手を振って、唇の形だけで「頑張れ」と伝え走り去った。

そろそろと振り返ると、壁に凭れ掛かって腕組みをする課長。

「2人っきりとか感心せえへんな」

課長が1歩近付くたび、わたしが1歩後ずさる。

「なんで逃げる?」

「あ、や・・・・・何となく?」

簡単に廊下から死角になる壁に背中を押し付けられた。
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