嵐の夜は 〜執着系上司に捕まりました〜
「もう酔ってんのか?」
靴の主に頭をポンポンと撫でられる。
「あ、課長。お疲れ様です」
サッと立ち上がると一段高い所にいるわたしと課長の目線が同じくらいになった。
恥ずかしくて下を向こうとしたら、わたしの顎の下に課長が人差し指と中指を入れてそうさせてくれない。
「このくらいの台に乗っかってくれてたら寸足らずの岩崎でもキスしやすいな」
そう言って揶揄うように課長が笑った。
「誰が寸足らずですか!」
恥ずかしさを言い返すことで誤魔化して、顎を引いてささやかな拘束から逃れる。
いつもこんなふうにしてこの人はわたしを茶化して遊ぶんだ。
「入らへんのか?」
「お絞りと追加のビールを受け取ったら入ります。皆さんお待ちかねですからお先にどうぞ」
「ご苦労さん」
脱いだ靴をキチンと後ろを向いて揃え、課長が座敷の中に入る。
お行儀までいいんだからな・・・・・。
背中越しに薄い襖を通して課長が来たことを喜ぶ歓声が上がっているのを聞いた。