私に優しい理由
話としては変わりますが、私にはいくつかの友人がいます。

古くからの友人から、今しがたできた友人や。
幼い頃を知っている友人から、新鮮味がある友人まで。

それらの友人は、付き合いの年月関係なく、私と親密に付き合ってくれていました。


私が困っていることにも、自分の悩みのように親身になって聞き、まるで母親のように寛大な心で私のモヤっとしたつっかえを解いてくれる。

そんな良き友人達でした。


だからこそ、あなたの事は黙っていました。

心配をかけたくない。
言われればそうかもしれません。

しかし、一番の理由は別でありました。


嫌われたくなかったのです。


あの友人達です。あなたのような歪な種を見たくらいで、私を嫌いになんてなることはなかったのかもしれません。
自分のことのように悩み、親身になってくれる友人は、きっとあなたのことを必死になって救ってあげようと悩んでくれるでしょう。
そして、私のように解決策を見つけることが出来ずに、絶望の隅に追いやられるのです。

そんなことになれば、私との間柄は自然と「めんどくさい」、「鬱陶しい」とあしらわれていくようになってしまう。

「重荷を背負わされた」と。

そう、私は考えてしまったのでした。


私は誰に相談することもできず、あなたについて1人で学び、1人で抱え込む羽目になりました。


あなたを抱える私の腕は、日が経つにつれてどんどんと弱り、そのおかげ…と言うのは自分でもどうかとは思いますが、あなたを抱き上げる回数も次第に減っていきました。


あなたは、私の中で“見つめる”存在となり、“抱える”存在ではなくなってしまったのです。


今思えばこの時から既に、私は狂ってしまっていたのかもしれません。

この時の私には、一切の責任も少量の希望さえも抱える力などはもう残ってはいなかったのですから。
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