こっち向いて笑って、先輩!
「……っえ」
みっちゃんのセリフのその続きを、私は聞けていなかった。
目の前に映った場面を見て、固まってしまった。
街を歩く人の声も
お店の外に漏れるBGMの音も
全部聞こえなくなってしまった。
「……っ、嘘」
数メートル、道路を挟んで見えたファミレスの窓ガラス。
そこに映る、男女2人組み。
嘘……。
『ちょっと、桃?聞いてんの?』
ストンと耳元から垂れ下がってしまった手から、微かに、スマホ越しにみっちゃんの声が聞こえたけど、それにも反応ができない。
ファミレスの席に座る、ミルクティー色のボブの毛先を軽く巻いている女の子。
その正面には────────。
「如月先輩……」