こっち向いて笑って、先輩!
「……邪魔」
先輩の靴箱の前に仁王立ちになると、呆れた顔をした先輩がそう言った。
呆れててもかっこいい。
「名前、呼んでくれるだけでいいんです!そしたら3日!いや、1週間!付きまとうの我慢します!」
「……」
「呼んでくれないとどかないです!」
こんなはずじゃなかった。
すぐに仲良くなれると思ってた。
それなのに、最近、先輩が私に向ける嫌いオーラは増していくばかりだ。
こんなことしたって、先輩に好かれるなんて思ってない。だけど、話したくて、近づきたくてたまらないんだ。
「…はぁ」
「来原 桃です!」
「…どけ、来原」
っ!!
その鋭く睨んだ表情さえも。
かっこいい。
如月先輩に、名前呼んでもらった!!
それだけで、胸がトクンと鳴る。
「あ、ありがとうございます!」
「呼んだから、1週間話しかけるなよ」
「…へっ」
ぽけーとしてる私をどけると、先輩は靴を履き替えて、そそくさと生徒玄関を後にした。
…1週間我慢するとか…言ったね…私。