こっち向いて笑って、先輩!


「桃は?」


「へっ、」


目立たないように輪の隅に立っていたのに、同じグループの子に名前を呼ばれてしまった。

横からは男子の安堵の声や悔しそうな声が聞こえて、男子はもう決まったんだとわかる。


「えっと…」


みんなが私に注目する。


「バイトしてたってけ?」


「し、してない…から、いいよ!私、実行委員やっても」


昔から変わらない。
みっちゃんにも心配されているこの性格。


押されたりお願いされるとなんでもいいよと返事をしちゃう。


情けない。


「来原さんほんとにやってくれるの?」


副会長が目をキラキラさせながらそう聞いてくる。


「う、うん。みんな忙しそうだし」


私がそういうと、ガラッと空気が変わって、グループの子たちが「さっすが桃!」なんて言って肩を組んできた。



自分でも嫌になるくらいの、都合のいい女。


でも、みんながギスギスするよりはましだ。


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