こっち向いて笑って、先輩!


「……目、つぶってよ」


「っ、、え……っ、は、いっ」


先輩に椅子ごと体を向けてから、ゆっくりと目を閉じる。


今度は、昨日とは違う──────。


昨日のキスも、まさか先輩が意図したことだって聞いて嬉しくなったけど。


今は─────。


─────プニュ


へ?!


頬が軽くつねられる感触がして、目を開けるとそこにはニヤッと笑ってる如月先輩と、私の頬をつねるしなやかな先輩の指。


ダ、ダマサレタッッ!!


「そー簡単にしないよ」


「はっ!ひどい!せ、先輩のイジワ────ッ」


っ?!


『先輩のイジワル』
そう言おうとした私の唇には、暖かくて柔らかい少し薄い唇が触れて。
大好きな先輩の目をつぶった景色でいっぱいになった。


騙した上にさらに騙すなんて、先輩ったら悪趣味だよ。でもそんな先輩もまた好きになって。


気持ちが溢れて止まらない。
何千回言ったって足りないよ。


「っ、せ、先輩、大好きですっ」


唇が少し離れてからそう言うと、


「知ってる」


大好きな先輩は満足げにそう言ってからまた再びキスを落とした。


無愛想な先輩も、


意地悪な先輩も、


少し弱い先輩も、


実はすごく照れ屋な先輩も、



先輩の全部が、世界で一番、大好きだ。



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