こっち向いて笑って、先輩!
「和那、根はすごく優しいからね。やたら一人で背負いこんでうまく伝えられない性格なんだろうなって、今ならわかるかな。……実は、もう2年、付き合ってる人がいるの」
っ?!
「え、あ、茜さん、ですか?」
またまた予想外なことを話す茜さんに戸惑ってしまう。だって、こういうのって絶対ライバル視されて睨まれるのがオチだと……。
「そんなに驚く〜?」
茜さんはハハッと可笑しそうに笑ってから、左手を少しだけ手前に広げた。
「あっ、」
薬指に光る、シルバーリング。
「留学したばっかりの時は、和那のことばっかり考えてて。そんな時に出会った人なの。私のことをずっと励ましてくれてそばにいてくれて」
リングを見つめながら嬉しそうに話す茜さんは、少しだけ頬が赤く染まっていた。
「正直、彼に出会ってからは、毎日が忙しくて充実していて、過去を振り返ってる時間なんてないんだ。日本に帰ったら、この気持ちが冷めちゃうんじゃないかって不安も実はあって。だからなかなか帰ってこれなかったんだけど。今回でちゃんと確信した。私はしっかり和那との時間を思い出にできていて、前に進んでる。それは和那も同じだった。久しぶりに会って話した時、付き合ってる人がいることを話したら、和那ったら『俺にもいる』なんて張り合ってきてさ」