こっち向いて笑って、先輩!
アプローチその11
*
「またね!桃ちゃん!」
「はい!ありがとうございました〜!気をつけて!」
学校の生徒玄関で、茜さんたちを送り出す。
茜さんは、もう今日の夜にはアメリカに戻るらしい。当分は帰ってこないと。今日一日会っただけだけど、もうまるでお姉ちゃんに近い感覚になっていて寂しくなる。
あんなにヤキモチ焼いてモヤモヤしていたのが嘘みたいだ。
「ちょ、茜ちゃーん!俺と和那にはバイバイしないのかよ!」
「あ、ごめん。桃ちゃんがあんまりかわいくて野村くんたちかすんでた」
「『たち』って。それ俺も含まれてんの?」
「さ〜?桃ちゃんとお幸せに!」
野村先輩の後ろから声をかける如月先輩に、イタズラっぽく笑った茜さん。
「茜も」
そう言った如月先輩の表情は、前よりもずっとスッキリしているように見えた。
茜さんたちの背中を見送ってから、みっちゃんはこれからバイトだと言って、野村先輩がみっちゃんをバイト先まで送ることになった。