こっち向いて笑って、先輩!
「そろそろ鍵閉めるから、早く…」
嘘…。
サラサラの黒髪に、切れ長の目。
倉庫のドアが小さく見えるくらいのスラッとした高身長。
薄暗い倉庫が、一瞬にして明るくなった気がした。
「き、如月先輩…」
目をまんまるにして目の前の彼の名前を呟く。
まさか…こんなところで会えるなんて。
さっきまでの憂鬱な気分が嘘のようになくなった。
って…いかんいかん。
付きまとわない話しかけないって約束をあと2日は守らなきゃいけないんだから。
「君、1人?もう1人の子は?」
「えっ、」
先輩がこっちを見てる。
私に話しかけてる。
嘘みたいなこの出来事に頭が真っ白だ。
普段は私から一方的に話しかけてるから、いざ話しかけられるとどうしていいかわかんない。