こっち向いて笑って、先輩!


怒られちゃったけど、顔を見れただけで、話せただけで、名前を呼んでもらっただけで、


すごくすごく、嬉しい。


ニヤける顔を周りの人たちに見られないように、校舎から校門までの道を歩く。



ほとんどの子たちは、如月先輩のルックスを見て好きになる。


でも、私はそうじゃない。


自信を持って言える。


私は、先輩の中身が大好きなんだ。



それは、まだ私が先輩と同じ学校に通う前の話になる─────。



中学3年の頃。


本当、漫画みたいな話なんだけど、


受験勉強のために来ていた近所の図書館で、欲しい本が置かれた本棚に手が届かなかった私の代わりに本を取ってくれたのが如月先輩だったんだ。


あの時、先輩が光って眩しく見えたのを今でもよく覚えている。


はい、と本を手渡してくれた時の優しい声と、キュッとあげられた薄い唇。


本当にかっこよくて、あの時の先輩の笑顔が私に見せてくれた唯一の笑顔なんだ。



絶対に、いつかもう一度あの笑顔を見るんだ!


そう思ってから、もう半年も経とうとしているんだから人生うまくいかない。



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