こっち向いて笑って、先輩!
「じゃ、そっち持って」
「えっ、」
先輩は私の横を通りすぎると、そう言って旗の上の方へ回った。
「あ、あの…」
「1人じゃ持てないぞ。女子なら余計」
「あ、はあ」
先輩が…
先輩が…
私を女子だと認識したー!
ニヤけそうになる口元を必死で抑えてから、私は棒を掴む。
「せーのっ」
横にしたまま2人で持ち上げて、倉庫から出る。先輩とのはじめての共同作業。
どうしようどうしようっ。
「来原」
っ?!
突然大好きな彼に名前を呼ばれて、何かに撃たれたみたいに体が跳ねる。
「な、な、なんでしょうか…」
呼んでほしいと頼んでもないのに、名前を呼んでくれた!
「そこ、段差あるから」
「あ、は、はい…ありがとうございますっ」
ほら、思った通り。
無愛想に見えて、本当はすごく優しい人なこと。だから嫌いになれないんだよ。