こっち向いて笑って、先輩!


「じゃ、そっち持って」


「えっ、」


先輩は私の横を通りすぎると、そう言って旗の上の方へ回った。


「あ、あの…」


「1人じゃ持てないぞ。女子なら余計」


「あ、はあ」


先輩が…
先輩が…
私を女子だと認識したー!


ニヤけそうになる口元を必死で抑えてから、私は棒を掴む。


「せーのっ」


横にしたまま2人で持ち上げて、倉庫から出る。先輩とのはじめての共同作業。


どうしようどうしようっ。


「来原」


っ?!


突然大好きな彼に名前を呼ばれて、何かに撃たれたみたいに体が跳ねる。


「な、な、なんでしょうか…」


呼んでほしいと頼んでもないのに、名前を呼んでくれた!


「そこ、段差あるから」


「あ、は、はい…ありがとうございますっ」


ほら、思った通り。
無愛想に見えて、本当はすごく優しい人なこと。だから嫌いになれないんだよ。


< 30 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop