こっち向いて笑って、先輩!
*
あ…如月先輩だ。
翌日、移動教室に向かう途中。
友達らしい野村先輩と話す如月先輩が前から歩いてきた。
「わっ!見て!如月先輩!」
「本当だっ!めっちゃイケメン!すれ違えるなんてラッキーだよ!3年棟は遠いんだから!」
「桃!如月先輩だよ!」
私が如月先輩のファンであること知ってるグループの子がそう耳打ちしてくれた。
言われなくても、如月先輩が前から歩いてくるのは誰よりも先に見つけた。
でも、今日から1週間、話しかけないと約束したから守らなければいけないんだ。
私は、キュッと目を瞑る。
これ以上先輩を見たら話しかけそうだから。我慢できなさそうだから。
スッと先輩が横を通りすぎたとき。
爽やかな柔軟剤の匂いがして。
この匂いを一生覚えておきたいって思った。