こっち向いて笑って、先輩!





あ…如月先輩だ。


翌日、移動教室に向かう途中。
友達らしい野村先輩と話す如月先輩が前から歩いてきた。


「わっ!見て!如月先輩!」


「本当だっ!めっちゃイケメン!すれ違えるなんてラッキーだよ!3年棟は遠いんだから!」

「桃!如月先輩だよ!」


私が如月先輩のファンであること知ってるグループの子がそう耳打ちしてくれた。


言われなくても、如月先輩が前から歩いてくるのは誰よりも先に見つけた。


でも、今日から1週間、話しかけないと約束したから守らなければいけないんだ。


私は、キュッと目を瞑る。
これ以上先輩を見たら話しかけそうだから。我慢できなさそうだから。


スッと先輩が横を通りすぎたとき。


爽やかな柔軟剤の匂いがして。


この匂いを一生覚えておきたいって思った。


< 7 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop