僕の存在が君に影響を与えてしまったことはきっと「勘違い」じゃない
僕の存在が君に影響を与えてしまったことはきっと「勘違い」じゃない
街中を歩く
対向車線の車
ふと立ち止まる
水がかかる
雨が僕の影を濡らす
なんて日だ
口に出した
ふと顔を上げると
僕を見て驚く君がいた
勘違いかもしれない
でも
なぜか僕は
そのことが無性に
うれしかったんだ


僕の存在は
誰も知らない
気づかない


はずだった


君はほぼ毎日この交差点に来た
何か探しているようで
もどかしい
何もすることができない
あの日
目が合ったこと
そして今
僕を探してくれているのか
と考えながら
僕は
今日も
対向車へと
向かう


誰も僕の存在を
知らない
気づいてはくれない
期待なんかしちゃいけない
君はもう来ないのか
君と目が合ったと思ったのも
やっぱり「勘違い」だったんだろう
探していると思ったのも
やっぱり「勘違い」だったんだ
それに
僕の胸が熱くなった
おかしいな

いや
僕はもう
熱くなるだとか
寒くなるだとか
そんなこと
遠い昔に
捨て去った
これももう
「勘違い」なのだ


僕は悲しい奴だ


久しぶりに来た君は
ひどく疲れていた様子で
まるで僕のようだと思った
救ってあげたいと思った
僕のようにはなってはいけない
抜け出せなくなるんだ
伝えたいけど
僕の声は届かない
見えない壁があるんだ
とても厚い壁で
隙間なんか
これっぽっちもないよ
それでも僕は叫んだ
届け
届いてくれ
僕側の人間にはなってはいけないよ
僕側の元人間にはなってはいけない

僕はどうしようもない奴だ

君と目が合った
とっても清々しい笑顔で僕を見る

君は宙を舞った


街中を歩く
誰も僕のことを知らない
対向車線の車
立ち止まる
水がかかる
宙を舞う
雨が僕の影を濡らす
深める
痛み
なんて日だ
口に出した
ふと顔を上げると
車を見て
通学中の学生を見て
野良猫を見て
信号機を見て
雨を見て
傘を見て
僕を見て
儚く笑う君がいた
なぜか僕は
そのことが無性に
悲しかったんだ




僕の存在は
知られちゃいけないんだ
気づかれちゃいけない





<つづくかも>
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