どんな君でも愛してる。
「……丸。」
最初に声をかけたのは…
「くまさん!」
トランクケースを3つも抱えた男子生徒。
高い背とガッチリとした肉付き…
誰もが1度は怖く思いそうな男子生徒が、真冬に話しかけた。
「これ、どこに置く?」
「棚の上に置くです!」
抱えていたトランクケースを棚の上に置いた、くまさんこと熊谷祐信。
「なんでくまが荷物運んでんだ?」
「裕兄 、頼まれた。」
真冬の前の席に座る男子生徒が熊谷に話しかけた。
2人の会話をクラス中が聞いている。
真冬に話しかけるタイミングを見計らっているのだ。
「お、おい!!」
次に話しかけたのは、ポニーテールの女子生徒だ。
「は、はいっ!!」
「身長は何センチや?!」
前に出てきて、仁王立ちになったその子は、声をあげて言う。
隣には、髪をバッチリ巻いた少しケバそうな女子高生。
2人の前には、誰も立たない。
なんとなく、一目置かれる存在であることが察せた。
「え?!身長!?…4feet9.09inchかな。」
「え……??それって…何センチ?」
「センチ…えーと…」
アメリカに住んでいた真冬は、センチに弱いらしい。
考えるように口に手を当てた。
「だいたい145センチだよ。」
真冬より先に答えを出したのは、前の席の男子生徒。
「さすが、ひろ…」
「1inchが約2.54cm、1feetが約30.48cmだからな。」
「ちっさくて可愛いなぁー!!!!」
急にガバッと飛び出した女子生徒は、その動きを隣の女子生徒に封じ込まれる。
「抱きつこうとしない!」
「えー!!!小さくて可愛いのに!!」
「あはっ、はははっ!面白いんだね!」
2人のやり取りを見ていた真冬が、笑顔になる。
「えと……お名前は?」
「市川千暖。ちーって呼ばれとる!隣は柚木莉菜。柚って読んどる!!」
「ちーちゃんとゆずちゃん!」
嬉しそうに名前を呼ぶ真冬。
その可愛らしい声は、あっという間にクラス中を惹きこんでいた。
「せやせや‼んで、このガッシリてるのが熊谷祐信。熊って読んでや。」
「くまさん。ありがとう。」
お礼を言うと、コクリと頷いた祐信。
いつの間にかトランクケースは棚の上に並べられている。
「んで、前の席が広瀬蒼太。みんなはひろって読んでる。」
「どーも」
「よろしくね!!」
千暖と莉菜と祐信と蒼太、そして真冬。
5人はこうして出会った。