私と結婚してください。
玲子さんはそんな冗談を言いながら帰っていった。
……で、私は玲子さんに渡された紙袋二つもって、反対の手で杖を動かし
やっと部屋の前までたどり着いたけど……
・・・どうやってあければいいの?
インターフォン…あるけど押せないよな……
そんなん使ったら今度こそ絞められそうだし…
荷物を置く?うまい具合に体か杖か挟めればいけるか……
…あ、杖をおいてドアノブを支えにけんけんでいこう!
それがいいわ!楽じゃん!
ってことで。
「よっ…」
静かに静かに、不快な音をたてないようにドアを開ければ、やっぱり不機嫌な凰成のままで
仕方なく私はとりあえずドアの向こう側の杖を取ってドアを閉め、凰成に近づいた。
「あ、の……」
近づいて、声をかけても、凰成は全くこっちを見ない。
出会ってから何回も凰成とケンカしてきたし、何回も怒らせてきたけど
こんな凰成は初めてだ。
「お、凰成……、
今日は出掛けたりして、ごめんなさい…」
でも、玲子さんの話を聞いて
玲子さんから受け取ったこれを見て
全部全部私が悪かったんだって気づいたから。
凰成は本当は優しい人だって気づいてたのに
凰成は凰成なりに私を大事にしてくれてたのに
どうして、気づかないふりなんかしてしまったんだろう……
「……あの「一人の飯はうまくない」
「…え?」
「そんなこと、お前よりよっぽど知ってる。
お前にそんなこと言われなくても、ちゃんと知ってるわ」
…え、と……なに?どう反応すればいいの…?