私と結婚してください。



「……本当に、そう思ってる?」


「当たり前じゃん。
……凰成だって、本当は私を契約解除していいなんて思ってないんでしょ?

だから、
……わざわざ私の好きな色まで聞いて、買ってきてくれたんでしょ?これ。」


私はそう言いながら凰成に近づき、さっき玲子さんから受け取った紙袋をひとつ、凰成の前に差し出した。


「私の足が治ってからでも良かったのに、わざわざ私のために、凰成がそのために外に出て買ってきてくれたんでしょ?」


その紙袋の中にはたった1つだけ、凰成のと同じブランドの、私好みのスリッパが入っていた。

朝、私が言ったパステルカラーのスリッパが一組だけ。


たったこれだけのために、わざわざ凰成がまたあの店に行ってきてくれたんだもんね。


「……足をぶつける度に大声出されたらうるせぇからな」


ほら、すぐ感情を裏返す。
……でも、それを表に直してあげるのも私の仕事だよね。

見て見ぬふりはもう、おしまいにするよ。


「…私、凰成の姫でいていいんだよね?」


「ったく…お前みたいな可愛げない女は他にもらわれ先もねぇしな、このままじゃ。」


「はっ!?」


「この先、嫌になったって言っても絶対解除してやらねぇからな。
最後までしっかり俺の世話しろよ。」


「……はい、ご主人様」


「それはまじでやめろ。2度と言うな。」



「・・・はい、すみません」


「それと」


「ん?」


「…希依も、もっと俺を頼れよ」


「え?」


……いや、頼っていいの?
だってあなた、私のご主人様だよ?

服従する私が頼っていい立場、なのか?


「ドアが開けられないならベルを押せばいい。
わがらないことがあるなら頼じゃなく、俺に聞けばいい。

俺も、気づけないこともあるけど
……ちゃんと言ってくれよ。俺に。

突き指して指痛めた時も、階段から落とされて足痛めた時も、車イスを押してほしいときも。


俺がいること忘れんな」


どうした、凰成。優しすぎないか?え?
……いや、凰成は最初から優しかったか。

いつだってこいつは私を最優先に考えてくれてたっけ。


「…ん、わかった。」




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